2012年1月16日 (月)

私の好きな俳句(層雲新年号より)平成24年

  私の好きな俳句(層雲新年号より)平成24

    順不同

はにかんでうつむいてきんもくせいが匂う 久光 良一

喪中の葉書が増えて今年も暮れる     堀切 博昭

そんなこともあった風が呼び戻す記憶   松尾 尚子

赤ちゃんには赤ちゃんのくしゃみ     井上 敬雄

山の柿のみえるお寺で写経する      井上 敬雄

ふるさとの雨戸開け放ち雀戻っている   佐瀬 広隆

秋の色を画帖に置いて畑のけむり     那須田 康之

老いて小さくなった私と並ぶ記念写真   富田 弥生

追肥する鍬を休めてしばし見上げる空   内藤 邦生

虫の歯形そのままに柿の落葉       外山 喜代子

我が家の炬燵に睡魔が潜んでいる     市川 一子

細く長く人生いろいろあっていい     三好 千峰

来て見れば町角の本屋無くなっていた   村田 徳子

四十年前の給料袋、又箪笥にしまい    村田 徳子

孤立した煙突の夕陽にながれる雲     山崎 文栄

数羽の雀が枝におさまり夕暮れる     山崎 文栄

赤線増える住所録百までに十五年     上原 多喜治

石畳にぽっくり鳴らし京の秋日和     吉原 恭仁子

記憶さっぱり途きれ池に浮く晩秋     吉原 恭仁子

足湯に浸り今日の幸せを帰る       内田 サヨ

湯豆腐の看板にひかれた清水寺の参道   荒金 奈留

乗る人も降りる人もない無人駅の猫一匹  小川 蝸牛子

彼岸花の小径を歩く           山口 穂銘

懐かしいシスターの笑顔が近付く駅の雑踏 塩地 キミヱ

地球騒然、ことし当り年か柿が鈴なり   清水 福司

がんばっぺとは言うもののみんな年寄り  清水 福司

刈り終えた田圃の風景を緑平雀が飛び立つ 下村 鳴川

庭の片隅にひっそり咲いて石路の花(緑平居)下村 鳴川

病院の今朝の窓はマグリッドの空     滝沢 忠義

文字を書く練習が日記となる病院の秋   滝沢 忠義

北米から来てポポーの熟れた匂い     田中 伸和

首相はお孫なんですか主治医冷かし鴉はカー野田 有竹

余生、句作り仕事の一つにしている    藤原 よし久

生家の緑うすれ川がひそと秋を流す    松本 千英子

よい月ですね回り道して行きますか    安田 十―

誰も振り向かないつわの花此の道     吉岡 憲生

心すっぽんぽん雲をことばにする     和久田 登生

穂すすきに風を残し日暮れ早まる     渡野辺 寿美子

わたしの気持ち見越して曇り勝ちな眼鏡  渡野辺 朴愁

これ迄何してきたか歳とった気がしない  池田 常男

野の花も一桶おいて花屋に馴染んだ嫁さん 池沼 両間子

あちこち柿熟れても採る人がない花である 岸本 寿山人

人生場違いの席もありナプキン膝におく  木俣 史朗

 層雲新年号(平成24年)より下村鳴川 抄出 

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2012年1月13日 (金)

私の好きな俳句(層雲12月号より)平成23年

  私の好きな俳句(層雲12月号より)平成23

      順不同

わたしの知らないわたしを見られている  久光 良一

ぱたぱた夜のスリッパ秋が付いてくる   大軒 妙子

黄金田の脇ゆく車窓の人となる      宮島 周水

何気ない風景に心置き風の余裕      谷田 越子

お布施の山を築く地獄の沙汰も金次第   井上 泰好

この国を気遣う神父のやわらかい手だ   平岡 久美子

十五夜の明るさへ虫の鳴く        井上 敬雄

言い訳あきらめてめし炊いている     きむら けんじ

河原町の喧騒の京に来ている       平山 礼子

スーパーの陳列秋があふれている     小堀 彰夫

私の笑顔が大好きだった亡父のために笑う 南家 歌也子

恙無く生きて空海の読経聞く寺      内藤 邦生

背を吹く風が菜の花匂わせている     泉沢 英子

笑ってごまかしたあの日の悲しい靴紐   伊藤 千代子

来春は卒業どんな花になるやら      那須田 康之

見知らぬ人の微笑みが今日の宝物     鈴木 憲

天高く藁の匂う村に来ている       外山 喜代子

ちょっと乗せられて頑張ってみたいあまのじゃくちば つゆこ

またおこしやすうと語尾が否定音     ふゆき れいこ

遅ればせながらぼくが十月の朝顔です   大岳 次郎

ふるさとは秋の七草日が暮れる      三好 千峰

ここにも彼岸花が咲いている朝の散歩道  三好 千峰

夢の中で若い日々楽しんでいる      堀切 博昭

町ん中の田圃彼岸花の行列です      村田 徳子

部屋にいても木犀が匂う月夜       山崎 文栄

先は見えた ゆっくりでいい此の道    小川 蝸牛子

いま世の中は神々の怒りをかっている   山口 穂銘

近況報告呑み忘れた錠剤が白湯とある   木俣 史朗

寂しい日 真黄な蝶が秋をよこぎる    斉藤 實

お寺の森がめっきり秋めく赤い橋渡る   清水 福司

たわわな柿の熟れ落ちて無人の家     清水 福司

あの日のように天得院さまの読経はじまる 下村 鳴川

句碑とおなじ句が掛けてあるあの日のように下村 鳴川

夕日いっぱい受けて笑う女と少年    田中 伸和

雨音もはんなり瓦をなめて春の京の宿  鶴田 育久

ひたむきに咲き続くコスモスの秋    藤原 よし久

風に中のしあわせ蝶高くもつれとぶ   松本 千英子

あめふるつくずく心にふるあめ     安田 十―

秋海棠に蜆蝶がくる 祭りの後     吉岡 憲生

君と方向が違う夕日をみている     和久田 登生

このところ月があかるい木瓜の実    和久田 登生

砂時計の砂サラサラ落ちて私のいのち  渡野辺 寿美子

降るだけで足りぬ雲が風をけしかけ窓を打つ渡野辺 朴愁

土産にと一つ味見してこの餅の塩味   池沼 両間子

仰ぐ青空が光ってなびく芒の穂     岸本 寿山人

 層雲12月号より(平成23年)抄出 下村 鳴川

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2012年1月12日 (木)

私の好きな俳句(層雲11月号より)平成23年

  私の好きな俳句(平成2311月号層雲より)

しばらくは白壁に朝焼けうつしている    井上 敬雄

しゃれこうべなぞる手が浄土たしかめる   宮島 周水

夕あせた夢がころがっている夏の終わり   大川 アツ子

夕立少し軟らかくなる夏の終わり      小堀 彰夫

先に花ある墓にまた花を供える       きむら けんじ

カレンダーめくっても夏が続く百日草    松尾 尚子

濡れた手より釣銭貰う土産のわさび     泉沢 英子

噴水広場の夕焼け赤トンボの数       山崎 文栄

夏の終りの有刺鉄線を越える        平山 礼子

子どもと一緒に子どもになって赤トンボ   那須田 康之

わが庭に蒔く水の青紫蘇匂う日々      内藤 邦生

欠席の理由(わけ)言わないコスモス揺れている 富田 弥生

秋が来たり行ったり子犬の寝相       ちば つゆこ

この風持帰りたい蕎麦畑にいる       市川 一子

うつむいて首振るばかりのねこじゃらし   ふゆき れいこ

こんなところに道祖神むかし道がある    三好 千峰

余生風にまかせ故郷の墓地の暮れ時     吉原 恭仁子

余生のシナリオ何もない血圧測る      上原 多喜冶

団扇のやわらかな風を戴いておる      前田 佐知子

省エネに一役風呂上がりの渋うちわ     内田 サヨ

陽炎ゆらゆらサルビア真紅にもえる     荒金 奈留

すり寄る猫になんにもないポケット     小川 蝸牛子

井泉水師が青島を訪れた日がなつかしい   山口 穂銘

今日も何事もなく終るそんなストレス    久光 良一

一仕事終え秋かぜのふうりん        佐瀬 広隆

思いがけぬ老齢も姉との差縮まらず     岸本 寿山人

咲けばわが深層へ魔性めく曼珠沙華     木俣 史朗

さようならの手が大きく振れて曼珠沙華   小山 貴子

よく聞けば蝉の歌にもへたな奴いる     斉藤 實

祖国が壊れて行く何かがおかしい      塩地 キミヱ

すぐそこの秋を信じ耐えている熱帯夜    清水 福司

磯の香りたつ荒浪が洗う過去未来      清水 福司

誰ともなく声だしてみる懐かしむこころ   下村 鳴川

せこし風が出てきたせめて夕べのことする  下村 鳴川

安全という言葉が死んだ311の辞書    滝沢 忠義

遅れ馳せの秋風に何はともあれ善光寺詣り  滝沢 忠義

雨降れば葱飯を炊く女と夫の命日      田中 伸和

金木犀の咲いた夜は月がその匂いになる   田中 伸和

「なでしこ」案山子の勇姿稲田豊作豊作   野田 有竹

ひとしきり思案してカラス山へ帰る     藤原 よし久

弱音吐くまいてんとう虫当てもなく飛ぶ   松本 千英子

はらはら秋の花こぼして一人暮らし     安田 十―

指先から醒めてくる透明体の蝶       吉岡 憲生

息災有難し病院の廊下静かにあるく     和久田 登生

とまるところ探しあぐねて炎天を舞う蝶   渡野辺 寿美子

鳥は虫はどこに潜む降りに降る雨      渡野辺 朴愁

朝夕涼しく晩まで咲いている西洋朝顔    池田 常男

水門に嵐の跡が蜻蛉止まると蜻蛉がくる   池沼 両間子

 しばらく体調不良のためパソコンから離れていました。

 112日ボチボチ始めました。下村鳴川 生

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2011年10月 4日 (火)

私の好きな俳句(層雲10月号より抄出)平成23年

  私の好きな俳句(10月号より抄出)平成23年

         順不同

満月を掘り起こした道路工事      小堀 彰夫

心溢れる日々満天の星で掬う      小堀 彰夫

シャベルで満月拾い上げる雨上がり   小堀 彰夫

燃え滾る太陽に蝉一羽溶けそう     小堀 彰夫

仏壇静にほほ笑む戴いた葡萄      小堀 彰夫

亡母の戦後が思われる裏地の継ぎ接ぎ  大軒 妙子

向日葵の影に何かを隠した蝶      内藤 邦生

風のどこを飛んでいても赤トンボ    内藤 邦生

遺影にコスモスの花影揺れている    内藤 邦生

想い出もコスモスの径をさまよう    内藤 邦生

無茶苦茶な渦が引いた新盆       宮島 周水

汗かいてる蟻がいる夕立ち前      宮島 周水

置いてきぼりのまま 絵葉書の海の色  高木 架京

娘が髪をほどく ここちよく風鈴の音  高木 架京

蝉のように子は泣き母は臨月      きむら けんじ

夕立ちが遠山まで透明に少し涼しく   山﨑 文栄

蝉一途に鳴いて遠い日の少年少女    大川 アツ子

あの日言いそびれた言葉が胸にある   大川 アツ子

ちょう二つ 円をえがいてゆく     井上 敬雄

その箱振ればわたしの骨の音がする夏   久光 良一

今朝も鳴きはじめてまだ死ねない蝉である 久光 良一

最後を託す息子一家と夏休み      平岡 久美子

寝るも面倒なうつらうつら日付変る   木俣 とき子

陰口は聞かぬことに心太をすする    泉沢 英子

核の十字架背負ったままどっかと平和像 宮本 卓郎

暑い暑いが口癖で長くのびている猫   松尾 尚子

終戦記念日ふと甦る青春の縮図     斉藤 静江

レースのカーテン夏を孕む       佐瀬 広隆

蝉しぐれの蝉一つきて喜んでいた亡父  佐瀬 広隆

カナカナと鳴きたそがれが降りてくる  萱沼 良行

気持ちをシフトできないおぼろ月    萱沼 良行

サルビアの駅でわかれたまんま     平山 礼子

マジでと訊かれてマジと答える     平山 礼子

庭を見ている 胸にある段差      加藤 えみ子

風よ吹け扇風機も疲れてる       市川 一子

異常なしとは言え老いては老いの体力  富田 彌生

母譲りの浴衣です高三の夏       那須田 康之

理不尽なこと蝉の小便         那須田 康之

死と向き合う勇気もなくて猫じゃらし  埋田 貞子

雨がくれた優しい時間にめくるぺーじ  伊藤 千代子

朝顔の数をかずえて何でもない日    伊藤 千代子

孫と一緒ひまわり畑を見に行くの    ちば つゆこ

考えてもしょうがない先のこと     堀切 博昭

一病息災今日も汗する         堀切 博昭

マスカット 絵手紙の青いひかり    漬水 八重子

靖国の八月十五日の蝉しぐれ      大岳 次郎

補聴器は何もきいてくれない今日が始まる 三好 千峰

お盆 ふと亡き母の声を聞く      村田 徳子

地平線はみ出た雲が吹き渡る風のアート 吉原 恭仁子

生け垣のやわらかな緑が匂う朝を歩く  荒金 奈留

真赤なバラが咲いた朝の太陽      内田 サヨ

静かに秋の気配をもち裏のカボチャの花 前田 佐知子

痩せた影が素直について来る 炎天   小川 蝸牛子

なつかしや、元気だったころ      山口 穂銘

昔唄った里の秋ふるさとの陽が落ちる  井上 泰好

旅先から贈るものに一葉の秋を添え   池沼 両間子

日々ふくらむ稲穂原子力成分なしと太陽 岸本 寿山人

打ち水に声かけて顔見知りの路地抜ける 木俣 史朗

長雨の後の不機嫌なトマトを買う    小山 貴子

乾杯、ジョッキでビールが喋り出す   斉藤 實

悲しみひとつ消せない消しゴム鬼やんま 塩地 キミヱ

原発事故の余波プールに水の無い夏   漬水 福司

蝉が熱中症を避けて鳴きやんでいる   下村 鳴川

たくさんの初盆を迎えたふるさとです  下村 鳴川

神も仏も信じない世だが盆には墓に参る 滝沢 忠義

大きな欠伸して涙溜めている月     田中 伸和

野党足引く許り気象異変で河童でも出現か 野田 有竹

月が捨ててあるぞとかわず鳴いている  藤原 よし久

連日の猛暑の不安老いにかぶさる    松本 千英子

    平成23年10月層雲より抄出 下村 鳴川

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2011年9月14日 (水)

私の好きな俳句(層雲9月号より)平成23年

  私の好きな俳句(層雲九月号より抄出)平成23年

順不同

雨真っすぐ降り苔の中のねじり花     山﨑 文栄

しらじらあけるさえずりきいている    井上 敬雄

新しい風がくるラベンダーの畑より    高木 架京

凪いだ海はやさしい嘘である       久光 良一

ちょうちょうひらひら野の花と口づける  佐瀬 広隆

今だからこそ言える話もあり梅雨明ける  平岡 久美子

ざんねんな父よシャツ前後ろ       きむら けんじ

夜更けの月が覗いてる誰もいない座敷   大軒 妙子

隣の椅子が氣になるつば広の帽子     宮本 卓郎

被災地思えば何でも我慢できる日々草   松尾 尚子

念仏となえても煩悩捨てずにいる     宮島 周水

刺青の背中の牡丹に鍼を打つ       平山 礼子

月に顔色のぞかれて眠る         萱沼 良行

宅急便です台風一過の涼しさ届く     泉澤 英子

枝豆色よく夏はやっぱりこれだネ     伊藤 千代子

赤信号しばし電柱の影に身を置く     齊藤 静江

亡父と亡母転ばぬよう去り行く送り火   木俣 とき子

花壇の花は花盛り人の降りない無人駅   鈴木 憲

とんぼうにお帰りなさいと迎え火     ちば つゆこ

母に貰った歯もみんな抜けた       夏目 雅子

姑の羽織で作ったベストの春を着る    内田 サヨ

眼鏡上げ下げし針より太い糸の先     上原 多喜冶

うちのとんぼお隣りのとんぼ仲よく盆がくる

                    小川 蝸牛子

あったのかなかったのか、さっぱり記憶がない

                    山口 穂銘

「平城山」を歌ったくらいで涙もろくなった 池田 常男

あと一日おけばのトマト土産の足しにもぐ 池沼 両間子

忘れていた笑いディサービスが引き出した 岸本 寿山人

稲藁には罪はない牛小屋ひたすら黙す   木俣 史朗

猫と暮らせばいつしか甘え声になる    小山 貴子

扇子の風涼しくいただく、女人の隣    齋藤 實

やがて終りが来る旅の二人のねじ花    塩地 キミヱ

合歓咲いて放射能まみれの猛暑降る    漬水 福司

瓦礫の向うを大漁旗が出ていく      下村 鳴川

海のロマンも屠殺して知らぬ顔の海の凪ぎ 滝沢 忠義

首にホクロがあって笑っている女     田中 伸和

つゆ明けぬにこの暑さ 新幹線に赤蛇お客 野田 有竹

どうしてもそう見える月の異常心理    和久田 登生

白桃の皮するりとむけて夏真っ盛り    渡野辺 寿美子

台風がつい其處へ気弱な飼犬が吠える   渡野辺 朴愁

  平成23年層雲9月号より抄出 下村鳴川

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2011年8月 7日 (日)

私の好きな俳句(層雲八月号より)平成23年

  私の好きな俳句(層雲八月号より)平成23

           順不同

抱かれしとき生を刻む確かな鼓動      加藤 えみ子

わたしの中のにんげんのかけらが流す涙   久光 良一

雲が一斉に向かう空の果ての赤い色     谷田 越子

母はははのままでその花のままで      宮島 周水

居酒屋の借りた傘がひん曲っている     むら けんじ

不安ポケットにねじ込んだままの一日    ふゆき れいこ

お湯の中で出来る正座の練習        漬水 八重子

約束の順番が狂いだしたよ濃あじさい    平岡 久美子

暮れてひっそり合歓の花の匂い       大川 アツ子

葵が咲きはじめた遠い昔の史実       富田 彌生

雲つぎつぎつぎと小走りに東に何かあるらしい 大軒 妙子

月のえがおどこへ夏つばきさいて白く    佐瀬 広隆

点々とつづいてゆくタンポポ        井上 敬雄

れんげ畑にちょうも風もきている

節電へ雲の切れ間から覗いた夏の本音    松尾 尚子

紫陽花淋しいから昨日と違う色に咲く    埋田 貞子

歩いては止まり止ったら歩く菖蒲の園    那須田 康之

梅雨晴つかんだ朝の洗濯機のリズム     泉澤 英子

国は何してるテレビに憤慨する夫      伊藤 千代子

雨のち晴れがお望みで窓にうつる顔     宮本 卓郎

流されていった言葉たちを集める      平山 礼子

悲しみさえも商品化されてゆく        

捨てるまでもない今日を捨てきる      夏目 雅子

待てど来ぬ人を茶店のパラソル       竹内 オリエ

朝な夕なに蛙が歌っているふるさと     三好 千峰

あじさいあざやかにあさがあけている

故郷の句会も一人減り二人減り       堀切 博昭

獅子脅し静かな雨の豊かなリズム      小堀 彰夫

帰り来れば テレビがひとり喋ってゐた   村田 徳子

呼ばれて振り返って思い出せない人     山﨑 文栄

郵便も人も来ないブロック塀の黒猫     上原 多喜冶

曾孫の寝顔が可愛い団地サイズの鯉のぼり  内田 サヨ

焼芋ほっこり色づいた枇杷の木の下     荒金 奈留

原発も政治も燻りつづける梅雨最中     小川 蝸牛子

夕焼け空に思いをはせる          山口 穂銘

梅雨晴れの空へ干されててんやわんや洗濯機 渡野辺 朴愁

いちにちやる事がいっぱいで楽しい     池田 常男

猫は膝に来るのが当然として主ものぐさ   池沼 両間子

亡き妻を夢見てをんなを描く        岸本 寿山人

海見下ろせば花匂ふ蜜蜂まぶいい絆     木俣 史朗

重石にもならぬガラスの金魚昼寝する    小山 貴子

白無垢が夢だった六月の花嫁になる     斎藤 實

雨の日は温和しく見ざる言わざる聞かざる  塩地 キミヱ

放射線気にしても詮無なし早稲田の山影   漬水 福司

山の廃校が生き続けてる朝ドラマ

少しずつ頑張ります被災地からの便り    下村 鳴川

何もかも失った顔が見つめる春の海

見えない不安も一緒に買って食べている   滝沢 忠義

頑張れという語彙しかなくてごめん

少年赤い服着て夕空のトンボになる     田中 伸和

山の頂上から月が出るコオロギが泣く

ひろひろとほたるなって帰ってきたね    鶴田 育久

吾より若い新聞訃報 何やら相済まぬ気持  野田 有竹

                   (注・九十七歳

電波塔で孵化れ(うまれ)育ち巣立つカラス 藤原 よし久

旧家の荒れようも紫陽花雨に息する    松本 千英子

明ければ樟は青葉に病棟静かである    吉岡 憲生

天主堂の島へ雨の向こうから橋が架る

核廃絶 座像の指先の避雷針

海から風店じまいの店を開ける      和久田 登生

原発に安全神話はない白い花びらの震え  渡野辺 寿美子

それぞれ個性もち雨の紫陽花

爪楊枝ならその本の下にある僕の机    青 まさよし

                 314日死去・89歳)

昼からのおやつは其処露店の回転饅頭

思い切り晴れたといった今日の青空

       層雲8月号(平成23年)より下村鳴川抄出

                  

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2011年7月13日 (水)

私の好きな俳句(層雲7月号より)平成23年

私の好きな俳句(層雲七月号より抄出)平成23

順不同

カーテン開ければ窓の外に山が来ている  久光 良一

春が訪ねてきたらしいチャイムがピンポン

白雲ひょいとそこにあり手が届かない

名前呼べぬままおーいと呼んでいる

旅に出たい靴が今日も靴箱の中にある

石段の一段一段のさくら         井上 敬雄

さくらふぶきの門をくぐる

引越しの人は手を振り犬は尾を振り    きむら けんじ

ここに居れば鳥の眼となり蛙の声となる  宮島 周水

たんぽぽ背伸びして保育園の鯉のぼり   大軒 妙子

春を凛として主張して被災地の桜     宮本 卓郎

島の人の律儀さでオリーブの木が並ぶ   高木 架京

身辺整理とて中途半端のまま春が逝く   大川 アツ子

被災地から逆に励まされてる青空     松尾 尚子

ころがる声をよけて坐る         萱沼 良行

牛も犬も自由を得た野のベクレル(福島・飯舘村)平山 礼子

何から話そう花に集う久びさの顔     泉沢 英子

子供唄って母さんと手繋いで通る     伊藤 千代子

宿からの朝焼け船は漁場へ急いで行く   那須田 康之

ありがとうが遺言カキツバタ咲きました  埋田 貞子

おてんとうさまが護った被災地の桜一本  富田 彌生

山の鶯石路の葉かがやいている      外山 喜代子

被災地の子の手いつも父親の腕をまさぐる 夏目 雅子

水草に滑降する糸トンボ細い雨の中    小堀 彰夫

ノアの箱舟もなく神々の沈黙       ふゆき れいこ

ハミガキからひねり出す今日一日     

あれこれ言ってみたとて時は流れる    三好 千峰

老いても若く働く夢のわたし       山﨑 文栄

独りは気楽といいきかせ夕餉を奢る    上原 多喜冶

つむじ風黄色い帽子が走る通学路     吉原 恭仁子

やすらぐ西光寺いつもの顔新しい顔    漬水 八重子

椅子に腰かけて眠れない夜の白いカーテン 内田 サヨ

夕焼けに向かって部活帰りの自転車が走る 荒金 奈留

つくし穂に出そろうて春の風わたる   小川 蝸牛子

妙齢の婦人と連れ添う         山口 穂銘

クールビズと言えば現代語六月は衣替え 渡野辺 寿美子

痛む腰持ち上げて正午のニュースのスィチ 渡野辺 朴愁

今日は朝から降っていて金剛葛城は雲の中 青 まさよし 

風は海から吹いてくる高い所にある僕の住居

片づいた様な片づかないような僕の机のまわり

天井見つめて病妻は時間を呼吸している 池田 常男

独り暮らし都忘れが色褪せて梅雨にいる

元気だねと声かけられた朝の水仙    岸田 寿山人

転んで失くした句を思い出した月が出ている

尾根道かがやくばかり鶯真似てみる   木俣 史朗

いい女が私の肩に、乗り過ごしす山手線 斎藤 實

石楠花こんもり咲いて余震にゆれ    漬水 福司

未練でしょうか時々障子揺らす程な余震

皇后さまと水仙 瓦礫に咲いた水仙   下村 鳴川

今年の四月は寒い青さんの訃報を聞く

農道はすぎなすぎな畠もいちめんのすぎな 滝沢 忠義

八重桜咲いても見る人がいない山裾の村の

紫蘇の葉一枚浮かせて朝のすまし汁   田中 伸和

ひまわり壷に生けて夏になるゴッホの顔

鳥籠に鈴虫鳴かせて少年の夏が始まる

驟雨で飛び込んだ店の写楽絵      鶴田 育久

肩書きおろした朝青竜 別人の温顔見せて 野田 有竹

ネクタイ結ぶ鏡の中の自画像      藤原 よし久

青葉あおばと深まり句碑守る丘の寡黙  松本 千英子

意志曲げず生きて来て下駄の片減り   安田 十一

いくつも悔恨あり棘は抜く時も痛い   

青麥 灯台の島へ海荒れている     吉岡 憲生

薫る風と車椅子押して退院も近い   

海がうんともすんとも春が曇る     和久田 登生

浮雲改めて見ていると落ち着く

  層雲七月号より抄出  下村 鳴川

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2011年6月 3日 (金)

私の好きな俳句(層雲6月号より抄出)平成23年

  私の好きな俳句(層雲六月号より抄出)平成23

順不同

もぐらたたきの全ては想定外から始まった   平山 礼子

かわいいコメント付けて一年生の花壇     大軒 妙子

満開の桜 余震に揺れる           南家 歌也子

付かず離れずの足跡が月の砂浜        宮本 卓郎

ドミノ倒しが夢の中までつづいてゆく     大川 アツ子

花が雨になる一日延ばしの返事        泉澤 英子

草刈機の音止む通り雨            斎藤 静江

静岡に原発がある恐怖            大岳 次郎

言うまいと思って言ってしまったことがある  三好 千峰

桜切るバカ梅切らぬばかその一枝を貰う    前田 佐知子

夫の云い分にも一理ある晩酌の熱燗      内田 サヨ

スニーカーの足の向くまま桜満開       荒金 奈留

桜満開ストーンと空が落ちてくる       小堀 彰夫

丘いちめんの蒲公英の一つが私のような    山﨑 文栄

うとうとサスペンスドラマ迷宮入り      上原 多喜冶

ゆっくりでいい走ってみたい桜吹雪を浴び乍ら 辻上 早百合

一年生お姉ちゃんの後からゆく桜並木     小川 蝸牛子

余白の欲しい人生である           山口 穂銘

放哉忌に逢うこころゆたかな島の春      漬水 八重子

また場ちがいなバラお上が決めます      和久田 登生

花ふぶきいっぱいつめた一年生のランドセル  渡野辺 寿美子

何かある 気忙しい妻がぼんやりしている   渡野辺 朴愁

思うことばかりで思うようにならない老い   渡野辺 朴愁

思い出といえば鎌倉から新宿まで僕も星童も若かった

                      青 まさよし

京都といえば本願寺裏界隈と昌山人を思い出す 青 まさよし

フリージァの赤と黄が今年も庭の低位置    池田 常男

妻病めばエプロンして米磨ぐ毎日の余震    池田 常男

近道を急いだ草の創が夜っぴて痛痒い旅    池沼 両間子

どこに居てもこの人正しく坐る涼しい帷子   池沼 両間子

生きているだけで今年も桜が咲いた      岸本 寿山人

瓦礫はねのけた枝先が蕾もつ         木俣 史朗

晴れのち花曇りの今日のわたくし       小山 貴子

水溜りにつつじの花を写して日曜日の公園   斎藤 實

笑うしかないときめ、ほほえみとおす     斎藤 實

被災者の暮らしを思う余震たかぶるなか    漬水 福司

これがこの世のできごと呆然と立ち尽くす   下村 鳴川

悪魔が弄んだ爪痕がまざまざと拡がる     下村 鳴川

瓦礫の下から春の彩り梅咲きはじむ      下村 鳴川

海がさらっていった心象風景の歪みにいる   滝沢 忠義

情緒もへったくれもないこの国のいま     滝沢 忠義

山の天辺に月が出てそっと話しかけてくる   田中 伸和

アパート昼隣り同士で赤ん坊泣かせている   鶴田 育久

めぶくものすべてめぶきはるらんまん     藤原 よし久

蝶もたのしい芝ざくらの広い彩り       松本 千英子

心配はなかよ 千葉から妙に明るい声     吉岡 憲生

 悼む去る314日 青 まさよし氏ご逝去(行年89歳)

   層雲6月号より(平成23年)下村鳴川抄出

      

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2011年5月12日 (木)

私の好きな俳句(層雲五月号より)平成23年

 私の好きな俳句(層雲五月号より)平成23年

順不同

海遠くまでみえ汽笛なる         井上 敬雄

控えめにやきいもーの声する午後の病院  大軒 妙子

わだかまり十文字に結んで捨てる     南家 歌也子

唯ぬらすだけの春の雪へ出掛ける     山﨑 文栄

呼べば返事してくれる人がいる白い水仙  谷田 越子

しなやかに生きてきて年よりでござる   平岡 久美子

いつの間にか雪になった窓が暮れている  大川 アツ子

そんな約束したかこれも歳のせい     伊藤 千代子

菜の花その辺りまでと送ってくれる    泉沢 英子

静かな独りで日なたぼっこ        那須田 康之

整理する本から落ちた色褪せたハガキ   富田 彌生

ある朝ゆとりのようにメジロきている   木俣 とき子

ここも水仙が匂う一輌列車停車      外山 喜代子

孫の背丈にかがんでジャンケンポン    ちば つゆこ

山を見て、川を見て、風車回っている   斎藤 静江

少しだけ歩けて病棟の長い廊下      吉原 恭仁子

病状もちなおす窓春の雪         上原 多喜冶

雪ふるウオーキングマシン歩を早める   村田 徳子

山茶花にメジロが来ている雪景色     内田 サヨ

入浴剤で痛い腰を労わる大寒の入り    内田 サヨ

そこまで来ている春へ口紅を買う     荒金 奈留

寄りそって見ているガラス窓の粉雪    荒金 奈留

と、笑んで母が母であるとき       佐瀬 広隆

象が卯の字を書く動物園、元旦      小川 蝸牛子

空震、窓を揺らす            山口 穂銘

春節 手のひらに惜別の雪がとまる    吉岡 憲生

花のつぼみ物言わぬ津浪がくる      和久田 登生

手加減しない津浪だ木切れくるま屋根   和久田 登生

帰ることのない旅立ち友の柩に雪舞う   渡野辺 寿美子

よしとしよう我が身偽らぬ日々の心底   渡野辺 朴愁

白い雲一つ流れてゆく遠いあの辺が海かな 青 まさよし

今朝の金剛葛城は雲の中で春まだまだ来ない 青 まさよし

耳かきしてやると喜ぶ病妻で昔若かった  池田 常男

病妻に愛していると今頃やっと言えた   池田 常男

酔うたなりに筋を通して己に合槌を打つ  池沼 両間子

いつ迄も生きてみたい弱虫だった少年   岸本 寿山人

月夜の雑念雲いそがせて通る       木俣 史朗

いつもの珈琲に頬杖のいつもの話     小山 貴子

酔いにゆるんだ唇のこぼした本音     斎藤 實

自分らしく咲いて散りたい寒椿      塩地 キミヱ

流れに杉木立ちを配し一幅の雪景色とする 漬水 福司

握手の掌が意外に頑丈で白いベットの君  漬水 福司

何もかも体調のせいにして炬燵がなにより 下村 鳴川

星がきれいなふるさとの鐘がながれる   下村 鳴川

誰も描かなかった暗い海が現われた    滝沢 忠義

見えない敵が浮遊する残酷な空      滝沢 忠義

風が竹を揺らして吹く朝の合掌      田中 伸和

雪が雨戸を叩くので黙って話を聞く    田中 伸和

昨日は昨日今日は今日明日は明日さ    鶴田 育久

爪先の黒斑 心配なしの診断で帰る小春日 野田 有竹

雪は無情しんしん降りつもる 被災地   藤原 よし久

今まで見たことのないもの見ている    平山 礼子

地獄絵の上を白い鳥が飛んでゆく     平山 礼子

そこに居なかっただけの偶然で生きてる  宮島 周水

唯ほほえみたもう仏に手を合わす     山﨑 文栄

夕月犬が誰彼なしに吠えている      大軒 妙子

きれいな小川で手をあらい顔あらう    井上 敬雄

人恋うるひとひらの遠い浮雲       井上 泰好

春くる匂いと思う沈丁花の裏通りを歩く  大川 アツ子

影が歩く私も歩いてゆく         大川 アツ子

胸に抱く骨かるく富士に白い雲      内藤 邦生

休園と知らず梅の花咲き誇る       斎藤 静江

くしゃみばかりいい話少しもない     斎藤 静江

佗助ひょっこり覗いている糸のような雨  望月 九十九山

テレビには香りがない菜の花の黄色    富田 彌生

伝言板尋ね歩く被災者に雪が舞う     埋田 貞子

今日は耳の日耳ふさぎたいことばかり   外山 喜代子

恐くて書けない地震原発         大岳 次郎

山に雪あり僧堂の石畳          大岳 次郎

泣きぐせのついた空うごきがとれない   ふゆき れいこ

何か物足りない日の山茶花が散る    内田 サヨ

古里の仏間に座り遠い日の家族を思う  荒金 奈留

送り人となる日それまでの生きざま   上原 多喜冶

瓦礫の山累累と残し大津波去る、無惨  小川 蝸牛子

白くはかない舞い降りては消える    佐瀬 広隆

潮呼びもどす干潟ことしの冬はながい  吉岡 憲生

野佛に椿一輪ここ教会跡の静けさ    吉岡 憲生

猿知恵は止せ花に蝶がくる       和久田 登生

余震また母子の顔に恐怖が走る     渡野辺 朴愁

買物といえば雑誌と僕のみかん一袋   青 まさよし

雲が流れてゆく雲が流れてゆく何処までも青空(絶句)

                   青 まさよし

物言わぬ病妻が地震に丸い目で私を見た 池田 常男

放射能が飛んで来たって福寿草     池田 常男

誰彼かまわず君の酔を兎に角謝る役が僕 池沼 両間子

同期の桜くり返しくり返し酔うて潰れる君 池沼 両間子

先の見えない私に百迄生きろという人  岸本 寿山人

墓石しみじみと今日帰ります      小山 貴子

蟻にも足ひきずって働くのがいる    斎藤 實

想定外では済まない大惨事天災と人災  塩地 キミヱ

家族相集う非常食にローソクが一本   漬水 福司

カーナビが映す津浪の恐怖に目を覆う  漬水 福司

真っ青なこの空に放射能の漂うことか  漬水 福司

防波堤を乗り越え船が家々を襲いくる  下村 鳴川

未曽有のできごと呆然と立ち尽す    下村 鳴川

この世の地獄図まざまざ放映する    下村 鳴川

二人で来て砂に座って夜の波音聞いている 田中 伸和

椅子が海に向いているベランダのひまわり 鶴田 育久

受話器取ったら切れてしまった押売りらしく 野田 有竹

名前だけ連呼する日没前の選挙カー   藤原 よし久

冷えこむ町をねむらせていく月の孤独  松本 千英子

  平成23年5月12日  下村 鳴川 抄出

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2011年4月16日 (土)

層雲創刊百周年記念號(平成23年3・4月合併號)

 私の好きな俳句 層雲創刊百年記念號(平成2334合併號)

順不同

こころ落ち着かせ空に届けた雪の便箋   谷田 越子

真白なしじまが語る遠い日のこと     宮島 周水

二月のこども護り札の鈴を鳴らして    平岡 久美子

鏡の中でおのれのしわが笑っている    井上 泰好

ネジが少しずつ緩んでゆく風の通り路   大川 アツ子

何の迷いもなく右へ曲る犬        伊藤 千代子

母の字で送られてきたふる里の味     那須田 康之

一年をしめくくり墓参の雪になる     那須田 康之

職場からの電話てきぱきと教え子十年ぶり 大軒 妙子

時間外の医師に何度も頭下げドアが軽い  大軒 妙子

キャンドルが思い出灯す冬枯れの夜    宮本 卓郎

庭のすみの陽だまりにあつまる      井上 敬雄

頑張ったその小さなからだを抱く     南家 歌也子

なんにも悪くない犬に当たっている    平山 礼子

急いで羽織り初写真梅がにおう      泉澤 英子

運転手になりたい子の持つ歩く時刻表   埋田 貞子

馬鹿の一つ覚え散歩は毎日同じ道     鈴木 憲

日向ぼっこの昔ばなしを聞いている    ちば つゆこ

振り返ればいつもそこにいる新春の雪富士 望月 九十九山

ゆったりと時が流れる嘘ではない砂丘   斎藤 静江

古いアルバムに 私の青春がある     堀切 博昭

欲しかったのは理屈抜きのその笑顔    ふゆき れいこ

北風が落葉を掃いているそんな朝である  三好 千峰

清々しく積った雪景色の元日       山﨑 文栄

めじろきたか 病床頭上         山口 穂銘

薄日さすひかりの雪ふる         佐瀬 広隆

いつも生意気なカラス黙りこくる寒さ   安田 十一

未練なく庭木が散らす元日の雪です    吉岡 憲生

人を許す事のむづかしさ福寿草の丸い蕾  渡野辺 寿美子

平安な日日で何より庭に来ている雀の親子 渡野辺 朴愁

やっと青空になった白い雲ゆっくり流れてゆく  青 まさよし

なんとなく深い吐息一つして僕の今日がはじまる 青 まさよし

ひとりだから魚一匹買って帰る      池田 常男

貧乏だと言ったって今じゃ便座が暖かい  池田 常男

寝るには早くて宿のテレビが地方の番組み 池沼 両間子

言われた馬描いてみる筆に勢いが無い   岸本 寿山

笑いも両手に受けて朝市のキャベツ    木俣 史朗

やっと会えて地図にない街をゆく     小山 貴子

話がしたいから、各駅停車でゆく     斎藤 實

一切合財水に流せば楽になる       塩地 キミヱ

霜の白さが雪のよう野も山も冬ざれ    漬水 福司

愚痴って動かぬパソコン鬱かも知れない  漬水 福司

元日は妻の墓から美しい海を見ている   下村 鳴川

元日のお供え墓前にならべ 孫たちよ   下村 鳴川

行方不明になった翠壷洞は何処へ行った  滝沢 忠義

希望とはチリの落盤救出作業を参照せよ  滝沢 忠義

豪雪の閉鎖感ジャスミン革命が匂ってくる 滝沢 忠義

午後は独りで老婆の好きな一杯の珈琲   田中 伸和

月夜おんなのゆびのしろいほうたい    鶴田 育久

元日も平日となす 歳となったか     野田 有竹

二人きりの正月終る紅梅開いている    藤原 よし久

冬の砂丘にうねっている埋めたはずの過去 松本 千英子

 層雲創刊百周年記念號より抄出  下村 鳴川

| | コメント (0) | トラックバック (0)

«私の好きな俳句(層雲2月号より)平成23年