私の好きな俳句(層雲五月号より)平成23年
順不同
海遠くまでみえ汽笛なる 井上 敬雄
控えめにやきいもーの声する午後の病院 大軒 妙子
わだかまり十文字に結んで捨てる 南家 歌也子
唯ぬらすだけの春の雪へ出掛ける 山﨑 文栄
呼べば返事してくれる人がいる白い水仙 谷田 越子
しなやかに生きてきて年よりでござる 平岡 久美子
いつの間にか雪になった窓が暮れている 大川 アツ子
そんな約束したかこれも歳のせい 伊藤 千代子
菜の花その辺りまでと送ってくれる 泉沢 英子
静かな独りで日なたぼっこ 那須田 康之
整理する本から落ちた色褪せたハガキ 富田 彌生
ある朝ゆとりのようにメジロきている 木俣 とき子
ここも水仙が匂う一輌列車停車 外山 喜代子
孫の背丈にかがんでジャンケンポン ちば つゆこ
山を見て、川を見て、風車回っている 斎藤 静江
少しだけ歩けて病棟の長い廊下 吉原 恭仁子
病状もちなおす窓春の雪 上原 多喜冶
雪ふるウオーキングマシン歩を早める 村田 徳子
山茶花にメジロが来ている雪景色 内田 サヨ
入浴剤で痛い腰を労わる大寒の入り 内田 サヨ
そこまで来ている春へ口紅を買う 荒金 奈留
寄りそって見ているガラス窓の粉雪 荒金 奈留
と、笑んで母が母であるとき 佐瀬 広隆
象が卯の字を書く動物園、元旦 小川 蝸牛子
空震、窓を揺らす 山口 穂銘
春節 手のひらに惜別の雪がとまる 吉岡 憲生
花のつぼみ物言わぬ津浪がくる 和久田 登生
手加減しない津浪だ木切れくるま屋根 和久田 登生
帰ることのない旅立ち友の柩に雪舞う 渡野辺 寿美子
よしとしよう我が身偽らぬ日々の心底 渡野辺 朴愁
白い雲一つ流れてゆく遠いあの辺が海かな 青 まさよし
今朝の金剛葛城は雲の中で春まだまだ来ない 青 まさよし
耳かきしてやると喜ぶ病妻で昔若かった 池田 常男
病妻に愛していると今頃やっと言えた 池田 常男
酔うたなりに筋を通して己に合槌を打つ 池沼 両間子
いつ迄も生きてみたい弱虫だった少年 岸本 寿山人
月夜の雑念雲いそがせて通る 木俣 史朗
いつもの珈琲に頬杖のいつもの話 小山 貴子
酔いにゆるんだ唇のこぼした本音 斎藤 實
自分らしく咲いて散りたい寒椿 塩地 キミヱ
流れに杉木立ちを配し一幅の雪景色とする 漬水 福司
握手の掌が意外に頑丈で白いベットの君 漬水 福司
何もかも体調のせいにして炬燵がなにより 下村 鳴川
星がきれいなふるさとの鐘がながれる 下村 鳴川
誰も描かなかった暗い海が現われた 滝沢 忠義
見えない敵が浮遊する残酷な空 滝沢 忠義
風が竹を揺らして吹く朝の合掌 田中 伸和
雪が雨戸を叩くので黙って話を聞く 田中 伸和
昨日は昨日今日は今日明日は明日さ 鶴田 育久
爪先の黒斑 心配なしの診断で帰る小春日 野田 有竹
雪は無情しんしん降りつもる 被災地 藤原 よし久
今まで見たことのないもの見ている 平山 礼子
地獄絵の上を白い鳥が飛んでゆく 平山 礼子
そこに居なかっただけの偶然で生きてる 宮島 周水
唯ほほえみたもう仏に手を合わす 山﨑 文栄
夕月犬が誰彼なしに吠えている 大軒 妙子
きれいな小川で手をあらい顔あらう 井上 敬雄
人恋うるひとひらの遠い浮雲 井上 泰好
春くる匂いと思う沈丁花の裏通りを歩く 大川 アツ子
影が歩く私も歩いてゆく 大川 アツ子
胸に抱く骨かるく富士に白い雲 内藤 邦生
休園と知らず梅の花咲き誇る 斎藤 静江
くしゃみばかりいい話少しもない 斎藤 静江
佗助ひょっこり覗いている糸のような雨 望月 九十九山
テレビには香りがない菜の花の黄色 富田 彌生
伝言板尋ね歩く被災者に雪が舞う 埋田 貞子
今日は耳の日耳ふさぎたいことばかり 外山 喜代子
恐くて書けない地震原発 大岳 次郎
山に雪あり僧堂の石畳 大岳 次郎
泣きぐせのついた空うごきがとれない ふゆき れいこ
何か物足りない日の山茶花が散る 内田 サヨ
古里の仏間に座り遠い日の家族を思う 荒金 奈留
送り人となる日それまでの生きざま 上原 多喜冶
瓦礫の山累累と残し大津波去る、無惨 小川 蝸牛子
白くはかない舞い降りては消える 佐瀬 広隆
潮呼びもどす干潟ことしの冬はながい 吉岡 憲生
野佛に椿一輪ここ教会跡の静けさ 吉岡 憲生
猿知恵は止せ花に蝶がくる 和久田 登生
余震また母子の顔に恐怖が走る 渡野辺 朴愁
買物といえば雑誌と僕のみかん一袋 青 まさよし
雲が流れてゆく雲が流れてゆく何処までも青空(絶句)
青 まさよし
物言わぬ病妻が地震に丸い目で私を見た 池田 常男
放射能が飛んで来たって福寿草 池田 常男
誰彼かまわず君の酔を兎に角謝る役が僕 池沼 両間子
同期の桜くり返しくり返し酔うて潰れる君 池沼 両間子
先の見えない私に百迄生きろという人 岸本 寿山人
墓石しみじみと今日帰ります 小山 貴子
蟻にも足ひきずって働くのがいる 斎藤 實
想定外では済まない大惨事天災と人災 塩地 キミヱ
家族相集う非常食にローソクが一本 漬水 福司
カーナビが映す津浪の恐怖に目を覆う 漬水 福司
真っ青なこの空に放射能の漂うことか 漬水 福司
防波堤を乗り越え船が家々を襲いくる 下村 鳴川
未曽有のできごと呆然と立ち尽す 下村 鳴川
この世の地獄図まざまざ放映する 下村 鳴川
二人で来て砂に座って夜の波音聞いている 田中 伸和
椅子が海に向いているベランダのひまわり 鶴田 育久
受話器取ったら切れてしまった押売りらしく 野田 有竹
名前だけ連呼する日没前の選挙カー 藤原 よし久
冷えこむ町をねむらせていく月の孤独 松本 千英子
平成23年5月12日 下村 鳴川 抄出
最近のコメント